宅建業免許は、本店を移転したり、支店(または従たる事務所)を設置したりすることで、管轄行政庁(免許権者である知事)が変わり、それまでの宅建業免許から新たな宅建業免許へ切り替えを行わなければならないことがあります。
このような宅地建物取引業免許の切り替え手続きを、「宅建業免許の免許換え」と呼びます。この免許換えの手続きは、
- 知事から大臣(またはその逆)の宅建業免許へ換える
- 知事から別の知事の宅建業免許へ換える
以上の2種類に大きく分かれますので、それぞれに分けて説明します。
※切り替え後は新たな宅建業免許が発行されることから、どちらの場合においても、免許番号は新しいものに変わります(何回更新したかの数字は(1)に戻ります)。
知事の宅建業免許から大臣の宅建業免許への免許換え
知事免許から大臣免許への免許換えは、主に以下のような場合に手続きが必要となるものです。
- 本店を設置する都道府県とは別の都道府県に、初めて支店(または従たる事務所)を設置するとき
- 同一の都道府県内に設置している本店と支店のうち、いずれかを別の都道府県に移転することになったとき
こつまり宅建業を営む事務所が複数の都道府県に渡って設置される状況に至るのであれば、1つの都道府県知事から受けた宅建業免許ではなく、国土交通大臣から受ける宅建業免許を予め受けておかなければならないということを意味します。
大臣免許への免許換えに要する日数
知事の宅建業免許から大臣の宅建業免許への免許換え手続きは、申請書を提出してから概ね4ヶ月程度の審査期間を要します。そのため、別の都道府県内に新たに設置した支店等で不動産業の営業を開始するためには、保証協会への加入手続き等を含めて半年弱の期間が必要になると考えて予定を組むことを求められます。
ここでの保証協会への加入というのは、たとえば別の都道府県に新たに設置することになった支店等についても、その都道府県の保証協会に準会員として入会し、支店分の分担金を納めなければならないという意味です。
以上の大臣免許への免許換えは、当事務所にて代行を承っておりますので、お悩みの不動産業者様はご相談ください。
知事の宅建業免許から別の知事の宅建業免許への免許換え
知事免許から別の知事免許への免許換えは、本店のみで営業する不動産業者様が、その本店をそれまでとは異なる都道府県へ移転させた際、求められる行政手続きです。
移転元の都道府県と移転先の都道府県がどこかによって手続きは多少異なりますが、概ね、移転前の行政庁(知事)宛に変更届を提出して宅建業免許上の状況を整え、移転先の行政庁(知事)宛に宅建業免許の免許換え手続きを申請することになります。
知事免許への免許換えに要する日数
知事の宅建業免許から、別の知事の宅建業免許への免許換え手続きは、行政庁側の手続きが約1ヶ月、保証協会側の手続きが約半月から1ヶ月程度かかりますので、合わせて1ヶ月半から2ヶ月程度で免許が切り換わることになります。
もとっとも、この後で触れる移転前行政庁への変更届の手続きで、意外と時間や手間がかかることも多いため、この部分に約半月から1ヶ月程度を要する不動産業者様も多いようです。(手続き全体では2ヶ月半から3ヶ月程度を要することになります)
移転後の営業可否は移転前行政庁に確認しておく
知事免許間の免許換えでは、先に本店移転の登記を行い、実態は新たな都道府県に移転した後で、免許換えの手続きを進めることになります。
つまり、本店移転してからその都道府県知事の免許が出るまで、2ヶ月程度のタイムラグが生じます。そのため、移転先の都道府県において、免許換えの手続きが進行する間も不動産業の営業を続けてよいか、移転前の行政庁に予め確認を取っておくべきです。
※これが認められる場合、しばらくの間は以前の都道府県知事免許で、新たな都道府県にて営業を続けることになります。
意外と面倒な移転前の変更届
知事免許間での免許換えは、言ってみれば新たな都道府県側で免許を取り直しになるわけですから、そこで求められる要件や書類等は、新規の宅建業免許の申請とあまり変わりません。
もっとも、意外と面倒なのが移転前の行政庁に対する各種変更届です。
たとえば役員変更があったのに届出を忘れていたとか、代表者の住所が変わっているのに登記の変更を怠っていたなど、現状と行政庁側情報との齟齬がある場合、その部分をしっかり変更届として提出しなければならないのは、イメージがつきやすいと思います。
このような一般的な変更届に加えて、移転先の行政庁の基準に合わせた変更届も、移転前の行政庁側へ提出しておかなければならないので、多少注意が必要です。
政令使用人や専任宅地建物取引士の変更届は移転前の行政庁へ
これはたとえば、移転前の行政庁では代表者が別の会社の役員に入っている場合でも、一定の条件から政令使用人を置かなくともよいとの判断がなされていたものが、移転先の行政庁では政令使用人必須との判断に至る場合には、移転前に政令使用人設置の変更届を提出して状況を整えなければなりません。
また、移転先の都道府県が遠隔にあり、移転後はその都道府県に居住する専任宅地建物取引士を設置するという場合なども、移転前の行政庁にその専任宅地建物取引士に交代した変更届を提出しておかなければならない場合もあります。
移転先の事務所の要件は移転先の行政庁へ
逆に、移転先で宅建業の事務所として利用する物件が事務所の要件を満たすか(つまりそこを事務所として宅建業免許を受けることができるか)は、移転先の行政庁へ予め確認を取っておくべき要素です。
移転登記を行い、移転前行政庁へ各種変更届を提出し、ようやく移転先の行政庁へ知事免許の免許換え申請を行ったのに、移転先の行政庁では事務所としての要件を満たさないとの理由で免許が下りないのでは、手続きに大きな無駄が生じてしまいかねません。
要件の厳しい都道府県への移転は十分確認してから
宅建業免許を受けるための大まかな要件は法定されているためどの都道府県でも変わりませんが、具体的な状況でそれが要件を満たしているか否かという判断は、各都道府県によってかなり違いがある部分です(ローカルルールなどと呼ばれます)。
そのため、要件を厳しく見る都道府県から、そうではない都道府県へ移転する場合はあまり問題が生じませんが、逆のパターンでは思ってもいなかった部分で手続きがストップしてしまいかねません。
当事務所では、他の道府県から東京都内へ本店を移転するパターンでの知事免許の免許換え手続きを承る機会が多いですが、この際、他道府県側の保証協会などに話を聞くと、東京都へ移転する場合には要件が厳しくなることが多く、移転を諦める不動産業者様も多数いらっしゃるとのことでした。
移転先の知事免許において、人的、物的な要件がどのように判断されるかは、よく確認しておくほうがよいでしょう。
他道府県から東京都内への本店移転に伴う知事免許換え手続きは、当事務所にて代行を承っておりますので、お悩みの不動産業者様はご相談ください。