宅建業免許の申請を行うにあたって、当事務所によくご質問を頂戴するのが「不動産業の実績や実務経験がなければ、宅建業免許は受けられないのですか?」という内容のご質問です。
不動産業界の経験が無いものの、これから不動産業を始めようとする方にとっては、気になる話題かもしれません。
不動産業の実務経験は不要
結論から述べてしまいますと、宅建業免許の申請を行うにあたって、不動産業の実務経験は求められていません。
そのため、個人事業主や代表取締役が不動産業とは全く関係のない職歴を持つ方であっても、他の免許要件さえしっかり満たしていれば宅建業免許を受け、不動産業を開業することは可能です。
ただし、このご質問は不動産業者として必要となる宅建業免許の要件と、宅地建物取引士の資格登録を申請する際に求められる実務経験の要件、両者を混同された結果生じているケースも見受けられます。
宅建業免許の要件と宅地建物取引士の要件は異なりますので、以下で簡単にご説明いたします。
宅地建物取引士の資格登録
宅地建物取引士の資格登録というのは、いわゆる「宅建」の試験に合格した人が、不動産業に従事するために宅地建物取引士となるための手続きのことをいいます。
この手続きにおいては、登録申請時から10年以内に2年以上の実務経験を有することという要件が存在します。そのため、宅地建物取引士となるためには、原則、不動産業の実務経験を求められることになるわけです。
ただし、実務経験がない人は一定の講習を修了することによって、実務経験とみなしてもらえる制度があります。
宅地建物取引士証の所有の有無で判断
つまり、宅建業免許の申請において、その申請者は不動産業の実務経験を求められるものではありません。実務経験を求められるのは、宅建試験に合格した個人が、宅地建物取引士として登録する際です。
ところで、宅建業免許においては専任の宅地建物取引士を不動産業に従事する事務所に設置しなければなりません。この際、専任の宅地建物取引士となる者が「宅地建物取引士証」を所持していることが前提となりますが、宅地建物取引士証を所持するためにはその宅地建物取引士が実務経験を証明していなければ発行されません。
結局のところ、宅建業免許の申請にあたっては、専任の宅地建物取引士となる者が有効な宅地建物取引士証さえ所持していれば、原則、それ以上の実務経験有無の確認等は考慮不要ということになるでしょう。