宅建業免許には、知事免許と大臣免許の2種類の免許があります。知事免許よりも大臣免許のほうが多様な業務を扱えるとか、格が上だとかいう違いは全くありません。以下で説明するように、あくまで事務所をどこに設置するかによって、免許権者である行政庁が異なるというだけの違いです。
知事免許と大臣免許の区別と免許の有効期間
知事免許
文字通り、不動産業の開業にあたって都道府県の知事から受ける免許のことです。
知事免許は、同一都道府県内のみに事務所を設置して宅建業を営む場合に、予め受けておかなければなりません。
たとえば、開業直後においては宅建業に携わる事務所が1か所という場合も多いと思いますが、このような場合はまず、知事の免許を受けて営業を始めることになります。
また、事業を拡大するためにはじめて支店(または従たる営業所)を設置することになった場合でも、その新たに設置する支店(または従たる営業所)が本店の事務所と同一の都道府県内であれば(つまり宅建業に携わる複数の事務所すべてが同じ都道府県内に存在するとときには)、そのまま都道府県知事の免許で営業することになります。
大臣免許
こちらは、複数の都道府県わたって不動産業に携わる事務所を設置するとき、あらかじめ国土交通大臣から受けておかなければならない免許です。
大臣免許は審査する行政庁が都道府県ではなく各地方の整備局となり、審査期間も約4か月必要となるなど、取得する手続きの手間は大きくなります。
開業当初より複数の都道府県に宅建業の事務所を設置する場合や、一つの都道府県内で知事免許を受けて営業していた宅建業者が別の都道府県内に支店を設置するとき、大臣免許を受けることになります。
免許の有効期間
宅建業免許の有効期間は、知事免許・大臣免許ともに5年間です。継続して宅建業を営む場合には、有効期間が満了する90日から30日前までに、免許の更新手続きを行う必要があります。
免許の有効期間を一日でも徒過してしまうと、その免許は失効し、無免許状態となります。そのため、あらたに不動産の取引などを行おうとするなら、あらためて知事・大臣の免許を受け直さなければなりません(もちろん、審査期間も新規に取得したときと同様の日数がかかります)。
そのため、有効期間が切れそうになってしまったら、そのまま放置してしまわず、まず先に管轄行政庁に出向いて速やかに相談することが大事です。
宅地建物取引士の手続きと区別する
宅建業の営業所には、必ず専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。この際、設置を求められる専任宅地建物取引士の人数は、宅建業に携わる従業者の人数によってかわります。
これから不動産業を開業されるときは、宅建業免許の手続きや要件が問題となっているのか、その前提としての宅地建物取引士の設置に関する手続きや要件が問題となっているのか、結構混同してしまいがちなのでご注意ください。
一人で不動産業を起業するとき
1人で宅建業を開業するなら、経営者が宅地建物取引士の資格を取得して予め登録しておけば、他に従業員が存在しなくとも不動産業をはじめることは可能です。このような場合、事務所は自ずと1カ所となりますから、取得する宅建業免許は大臣ではなく知事になります。
逆に、開業するにあたって 申請者(個人事業主または代表取締役など)自身が宅地建物取引士の資格を取得していないのであれば、資格を持っている従業員を雇う必要が出てきます。