不動産業を営むための「営業保証金」は、主たる事務所で1,000万円、従たる事務所で500万円と、その額が大きいことから、これから宅建業を始めようという人にとっては大きな壁となることがあります。
このデメリットは、ハトマークやウサギマークといった保証協会に入会して保証金分担金を支払い、営業保証金を免れることで回避が可能ですが(より詳しくは、保証協会と分担金とは?を参照ください)、営業保証金制度には営業保証金制度ならではのメリットも存在します。
営業保証金制度を利用するメリット
ハトマークやウサギマークなどの保証協会に入会して保証金分担金を納めるのではなく、供託所に営業保証金を供託して不動産業を営業する主なメリットは、以下の3つです。
- 宅建業開業までの手続き期間を短くできる
- 月々支払う必要のある費用が発生しない
- 廃業時に取り戻し請求ができる
宅建業を早く営業開始できる
保証協会に入会しようとすると、免許申請手続きだけでなく、保証協会の加入手続きも並行または連続して行わなければなりません。
そのため、営業保証金を利用した場合と比較して、宅建業を始めるまで(宅建業免許が下りて営業活動が可能になるまで)には、より日数が必要となります。
一方、営業保証金制度を利用すれば、免許取得後に供託して届け出るだけで済みます。行政庁の審査期間は変わらないものの、審査さえ終わってしまえばそこから最短1~2日で供託することも不可能ではありませんから、開業までの期間を数週間は短縮することができます。
月々生じるコストを抑えることができる
また、保証協会の分担金は主たる事務所60万円、従たる事務所30万円と、営業保証金と比較してかなり少額にはなりますが、宅建業協会などへの入会金や会費などが別にコストが100万円前後発生してしまいます。また、年会費なども数万円から10万円程度が別途必要となりますから、継続して発生するそれらのコストも計算に入れておかなければなりません。
一方、営業保証金制度を利用する場合、最初に供託してしまえばそれで完了ですから、月々のコストを考慮する必要はありません。
廃業時に戻ってくる額の割合が高い
さらに、営業保証金であれば廃業時に取り戻し請求を行うことでほぼ全額を回収することが可能ですが、保証協会への入会金や会費などは、廃業時には戻ってきません(分担金は手数料等を差し引かれて返金されます)。
事業内容の方針転換など、時機に応じて柔軟に見直す可能性のある法人であれば、宅建業廃業時も視野に入れて、営業保証金制度活用の有無を考慮しておくほうがよいかもしれません。